数学書のてにをは
数学書の基本的な読み方を,重要であるにも関わらず,私の知る限りあまり周知されていないのでそのいくつかを書き記します。
私が大学生の時に数学書(確か松坂和夫著『集合・位相入門』)を読んでいて「ならば」,「したがって」,「ゆえに」等の表現は論理的に「ならば(⇒)」を意味することは感覚的にもすぐにわかったのですが,特に「すなわち」という表現が出てきたときに「ならば」の意味で解釈すると前後の文脈から少しおかしいなと気が付きました.あれ,これって逆もいえるかもしれない.実際に「すなわち」という表現が出てきたときに全て逆が示せたので、「すなわち」という表現は同値(⇔)の意味で使われることに気が付きました.たとえば,
Aである.すなわちB
と書かれたらAとBは同値を意味します.この他にも同値を意味する言葉はあって,私の知る限り「AはBを意味する」,「AはBに他ならない」等があります.一番有名なのは「AはBであることの必要十分条件」や「AとBは同値」でしょう.
このことは意外にも数学科の周りの友人でも知らない人が多く,また大学の授業でも書物でも指摘されることがないのでずっと不思議でしたが,おそらく数学書を読む人はこの程度の事は自力で気が付かないといけないという事でしょう.
英語ですと同値の表現で便利なiff(if and only ifの省略)といのがあって, A iff Bと書くことが出来るのですが,日本語ですとこれに該当する便利な表現がないので, 私は個人的にAすなわちBと書くことが多いです.「すなわち」以外の同値の表現は視覚的にA⇔Bにならないので,「すなわち」の表現は個人的に気に入っているのですが,多用しすぎると繰り返しの表現になってしまうのでそこは気を付けましょう.